特定技能ビザにおける外国人労働者の単純労働とは?

 

2019年4月から、法務省の内部部局であった「入国管理局」は格上げされ、法務省の外局として外国人関連の行政事務を管轄する「出入国在留管理庁」と名称を新たにしました。

そして今回の出入国管理法の改正にあたり、これまで原則的に禁止されてきた外国人の単純労働を可能にする要項を盛り込んだ、「特定技能ビザ」という資格が新たに制定されました。
労働人口の減少に喘ぐ我が国において、その打開策の一手である外国人労働者の登用がより推し進められる形となります。

 

単純労働の担い手だった留学生や技能実習生

カフェでアルバイトをする女性

政府はこれまで、「外国人労働者は特別なスキルを伴わなければならない」という姿勢を維持してきました。これは“単純労働の外国人を受け入れない”という方針を顕示しつつ、しかし国際貢献の名のもと、発展途上国の人たちに日本の技術を教えるという名目で来日する外国人を受け入れています。

この「技能実習制度」は事実上、単純労働を行う外国人労働者の受け入れであり、この労働者確保という副次的なものが制度の本音でもありました。

一方で留学生の外国人には、週28時間までのアルバイトが認められており、学業の傍らコンビニや飲食店で働き、学費や生活資金などに当てています。

厚生労働省によると、現在日本に在留する外国人労働者のうち、先に述べた「技能実習」と「留学」の資格で就労する外国人は全体の4割を占めています。少子高齢化に伴う労働人口不足で、こうした外国人に頼らざるを得ないという日本の現状ですが、様々な所で歪みも生じています。

とりわけ途上国からの留学生は借金をして来日する場合も多く、勉学の傍らのアルバイトは必須となります。しかしこうした留学生の中には悪質なブローカーによって、便宜上留学生として来日して就労するという、“留学生”とも“出稼ぎ”ともつかないような外国人は少なくないと報告されています。

また技能実習生も同様に、低賃金や長時間残業など“ブラック就労”の問題は、近年テレビなどマスコミにもたびたび指摘されています。さらに今回の法改正に際して、増加する在留外国人の移民化を危惧する地域住民の声も大きくなり、法改正後にはじめて顕在化する諸問題も水面下で複数潜んでいるようです。

ともあれ今回の改正入管法は、自国民でまかなえなくなった国内の労働者構造に、新たに在留資格を設けて外国人就労を合法的に位置づけるというものなのです。
今後、日本の将来像をマクロな視点で捉えたとき、日本経済が目に見える形で失速する前に“受け入れるべきは受容する”という、法だけではなく私たちの意識改正も求められているのです。

 

 

2019年4月から始まった「特定技能ビザ」

畑で育てた野菜を収穫する様子

政府は特定技能ビザによる外国人労働者を、2019年4月の制度開始から5年間で約34万人の受け入れを見込んでいます。その受け入れ対象となる業種は、日本で人材不足が顕著な14業種でアジア各国を中心に介護、外食、建設、ビルクリーニング、農業などで多くの受け入れを予定しており、特定技能1号と2号の二つの段階を用意しています。

 

また、出入国在留管理庁は、特定技能を含む在日外国人を集約的に管理することをはじめ、外国人技能実習生などで問題が指摘されていた悪質な仲介ブローカーによる人材斡旋などの監視・排除も目的としています。また、賃金も日本人と同等以上とするよう受け入れ先企業に義務付けています。

以下では特定技能ビザで就労できる労働の性質について解説していきます。

 

単純労働としての「特定技能1号」

 

「相当程度の知識または経験を要する技能」を持つ外国人に与えられる「特定技能 1号」は、単純作業など比較的簡単な仕事が対象となります。

最長5年の技能実習を修了するか、技能と日本語能力の試験に合格すれば取得でき、在留期間は通算5年間で、家族の帯同は認められません。

労働者には特段の育成や訓練を受けることなく、直ちに一定程度の業務を遂行できる水準の技術をもっている事が求められ、1号の外国人労働者が従事できる業種は、農業、漁業、飲食料品製造、外食、介護、ビルクリーニング、素材加工、産業機械製造、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、の14業種が設けられています。

 

非単純労働の「特定技能2号」

高度な試験に合格した人に与えられる「特定技能 2号」は、現場監督など熟練した技能や能力を要求される仕事に就く外国人です。在留資格は1~3年ごとに更新ができ、更新時の審査を通過すれば更新回数に制限はありません。長期の就労が可能で、実質的に将来日本での永住することが出来るものです。そして配偶者や子どもなど、家族の帯同も可能となります。

現在、特定技能2号は建設や造船などの業種で導入が検討されています。他の業種にも広がる可能性がありますが、1号の運用状況を踏まえて2号の導入のタイミングを判断することになっています。

 

人手不足は2割解消できるにすぎない

安全帯をかける建設作業員

政府の試算によると、先に挙げた14業種は58万6400人の人手不足で、5年後には2.5倍の145万5千人に膨らむとも予測されています。

特定技能は、初年度の19年度に最大4万7550人の受け入れを想定しており、その約6割が現在の技能実習生から特定技能1号に移行した外国人労働者となる見通しです。そして2024年までの5年間で、計34万5150人の受け入れを見込んでいます。

政府見込みである最大34万人の外国人労働者の受け入れが達成できたとしても、14業種の人手不足の分母である145万5千人という労働者を埋め合わせできるのは、全体の約2割ということになり、楽観ができるものではありません。

外国人の受け入れと並行して女性の活用やシニア層が働きやすい環境づくり、AI(人工知能)やロボットによる少人化など、働き方改革や技術革新による生産性の向上が欠かせません。

 

外国人労働者に選ばれる国になる

労働者不足に喘いでいるのは日本ばかりではありません。近隣諸国である韓国でも人口減少による労働者不足では共通の問題を抱えており、東南アジアの各国では、将来の出稼ぎ労働者に育成することを目的とした語学学校も年々増加しています。

近年は発展途上国でも、フェイスブックなどSNSでの情報共有が当たり前となり、外国に出稼ぎを考えている労働者たちに日本の労働実情は随時共有されています。
ひとたび悪い噂が定着してしまうと、出稼ぎの行先としての魅力を失い、遂には選ばれない国となってしまいかねません。

法的に働きやすい環境を整えることはもちろん、働き手の精神衛生面にも配慮し“外国人労働者から選ばれる国になる”という意識もより日本側に求められてくるでしょう。

 

まとめ:特定技能一号の本音

工場で働く外国人

今回の法改正にあたり、政府は当初「特定技能1号は単純労働ではなく、一定の技能を持つ労働である」という認識を持っていました。しかし特定技能ビザで就労できる各14業種でのひっ迫した求人状況をみると、言葉を変えた事実上の単純労働ビザということになります。

「なんとしても労働者を確保したい」という日本各地の事業者の声は相変わらずで、むしろその声が大きくなってきています。そんな中で、これまでの建前と現実とに大きな乖離のあった技能実習制度よりも、より現実的で実質的な労働需給のニーズを満たしてくれる制度として「特定技能1号」を捉えることが出来るでしょう。

いよいよ令和時代がはじまりました。日本経済の存続と発展のために在留外国人との共生社会を築く。この命題に対して、雇用する外国人との労使関係にも新たな価値観とその共有が求められて行くことでしょう。