外国人を自社で雇用する場合、日本人の採用と異なるのは在留資格の手続きです。
手続きで書類に不備があると、在留許可が不許可になってしまいます。
提出書類は申請者本人が揃えますが、なかには決算書や会社の登記簿謄本など、企業側が用意するべきものもあります。
提出する書類は、申請する在留資格の種類はもちろんのこと、企業規模によっても異なります。
ここでは、在留資格の申請で求められる書類を中心に、外国人雇用に必要な資料についてご説明します。
在留資格の手続きで求められる書類の3つのポイントとは?
手続きというと、煩雑な書類の提出が求められる印象です。
たしかに、在留資格ごとに必要な書類が変わったり、申請する企業の規模や本人の経歴で求められる書類が異なるなど、綿密な準備が必要です。
しかし、求められる書類は大きくわけて3種類です。
以下の3つのポイントをおさえて準備を進めましょう。
外国人雇用で重要な事業の安定性は、事業規模や決算資料から
在留資格の手続きでまずポイントとなるのが、外国人を雇用する会社についての説明資料です。
会社が上場しているか、もしくは売り上げ規模によって求められる書類が変わります。また、決算状況がわかる損益計算書の写しや貸借対照表の写しといった資料も必要です。なぜならば、企業の安定性と継続性が在留資格取得の審査基準になるからです。
せっかく外国人を雇用しても、すぐに倒産しては来日した本人の生活が成り立ちません。
企業の経済状況に余裕がなければ、賃金未払の問題がおこることも懸念されます。
どんな職種で、どのような仕事内容に外国人を従事させるか
在留資格の手続きで、最も重視されるといっていいのが、どんな仕事をしているかという点です。
在留資格の定める条件に見合う職種や仕事内容でなければ、申請は許可されません。
こうした内容は、事業を説明する会社案内、職務内容や雇用条件を記載している雇用契約書から判断されます。
ほかにも、登記事項証明書や定款のコピーを提出することもあります。
申請する外国人本人の、学歴や職務経験がわかるもの
最後に重要なのが、申請する外国人本人の経歴がわかるものです。
職種によって、求められる資格や実務経験の年数が異なります。在留資格の条件を満たす技術や専門知識を持っているかどうか、学校の卒業証明書や成績証明書、資格の証明書等で証明します。
ほかにも、職務経歴書や在籍していた企業からの推薦文なども有効です。
在留資格の変更や申請手続きで企業が用意するべき書類は?
在留資格の取得は、外国人を海外から呼び寄せるケースと、国内にいる外国人を採用するケースの2パターンにわけられます。
ここでは、それぞれの手続きで求められる提出資料をご説明します。
海外にいる外国人を帯び寄せるのに必要な手続きと必要書類
通常、海外にいる外国人を呼び寄せる場合は、「在留資格認定証明書」の交付を雇用予定の企業が申請します。
外国人本人が日本に入国し、そこから在留資格を申請する方法も可能ですが、それだと入国後に不許可・帰国のリスクがともないます。
先に日本国内から在留資格認定証明書が発行されていれば、入国後にやむ負えず帰国となることがなく、かつ在留資格の取得もスムーズに進みます。
・在留資格認定証明書の流れ
- 雇用予定の企業が、在留資格認定証明書の交付を申請します
- 発行された在留資格認定証明書を、外国人に送付します
- 受け取った外国人は、その証明書をもって現地の日本大使館でビザを申請します
- 日本入国時に、ビザと在留資格認定証明書を掲示します
・在留資格認定証明書の申請に必要な書類リスト
必要な書類は、「申請する在留資格」および「企業規模」によって異なります。
・共通の提出書類
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 写真(縦40mm、横30mm)
- 返信用封筒
・学歴の証明や企業に関する追加の提出書類
申請するカテゴリーによって、活動する内容や受け入れ機関(企業)に関する書類を提出します。
原則として、企業の法人登記や決算書、および雇用予定の外国人の学歴や経歴を証明する書類を提出します。
【基本の追加提出書類】
- 企業の法人登記簿謄本の写し
- 企業の損益計算書の写し
- 事業内容を明らかにする書類
- 業務内容や賃金を明らかにする書類(雇用契約書等)
- 卒業証明書や職歴を証明する書類
しかしながらこれらの追加提出書類は、企業規模によっては免除されます。
入国管理局では、外国人が所属する企業や機関を以下のカテゴリーによってわけています。
【企業区分】
- カテゴリー1:日本の証券取引所の上場企業等
- カテゴリー2:前年度の源泉徴収額が1,500万円以上の個人・団体
- カテゴリー3:前年度の源泉徴収額が1,500万円未満の個人・団体
- カテゴリー4:上記のいずれにも属さない個人・団体(新設企業等)
カテゴリー1およびカテゴリー2属する企業・機関では、追加分の書類の提出は求められません。
「四季報の写しまたは日本の証券取引所に上場していることを証明する文書」もしくは、「前年度の源泉徴収票等の法定調書合計票」を提出しカテゴリーを証明できれば、共通の提出資料で済みます。
企業区分で変わる必要となる提出書類のリスト
この企業区分での提出書類の違いをもとに、以下にカテゴリー1とカテゴリー3で求められる書類を詳しくみてみましょう。
ここでは例として、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で求められる提出書類をご紹介します。
・例:カテゴリー1の企業が求められる書類
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 写真(縦40mm、横30mm)
- 返信用封筒
- 四季報の写しまたは日本の証券取引所に上場していることを証明する文書
【外国人本人が用意する書類】
- 専門学校の卒業性であれば、卒業証明証書などの専門士または高度専門士の称号を取得したことを証明するもの
カテゴリー1では、外国人本人が専門学校卒の場合をのぞき、本人に関する書類は原則求められません。
・例:カテゴリー3の企業が求められる書類
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 写真(縦40mm、横30mm)
- 返信用封筒
- 登記簿謄本
- 直近年度の貸借対照表や損益決算書のコピー
- 事業内容を証明する会社案内などの資料
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等
- 雇用契約書
【外国人本人が用意する書類】
- 大学や専門学校の卒業証明書
- 大学や専門学校の成績証明書
- 履歴書
- 仕事に関連する資格を証明する書類
このように、企業区分によって最終的に提出するべき書類は異なります。
必ず法務省のサイトで確認をしましょう。
日本国内にいる外国人を採用するために必要な書類
すでに日本国内に滞在している外国人を採用する場合、以下の2種類の方法があります。
- 「在留資格変更許可申請」:なんらかの在留資格を有しているが、自社での業務内容に適さないため変更が必要な場合(例:留学生を雇用する)
- 「就労資格証明書交付申請」:いまある在留資格で通用するが、本当にその在留資格が適しているのか確認する場合
在留資格変更許可申請の手続きに必要な書類
通常、雇用予定の外国人本人が日本国内から申請します。
先に説明した在留資格認定証明書交付申請と同様に、必要な書類は企業区分で異なります。
・共通の提出書類
- 在留資格変更許可申請書
- 写真(縦40mm、横30mm)
- パスポート及び在留カードの掲示
企業区分のカテゴリー分けは、先ほど説明したのと同様です。
カテゴリー1または2に属する企業は、その区分を証明する書類を提出することをもって、追加資料の提出の必要はありません。
カテゴリー3および4の企業が提出する追加書類は、おなじく企業の内容を明らかにする登記簿謄本や決算書、申請者本人の学歴や職歴を証明する書類が求められます。
就労資格証明書交付申請の手続きに必要な書類
就労資格証明書交付申請とは、主に転職した外国人が、転職先でも現在の在留資格で働けるか否かを確認するためのものです。
この申請をすることにより、在留資格の期限が迫り再申請をする際に「業務内容がそぐわない」という理由で不許可になるリスクを減らすことができます。
外国人本人が申請する際は、以下の書類を提出します。
【就労資格証明書に必要な提出書類】
- 申請書
- パスポート及び在留カードの掲示
- 資格外活動許可を得ているものは、その許可証を掲示
- 源泉徴収票(前の会社が発行したもの)
- 退職証明書(前の会社が発行したもの)
- 本人の履歴書
さらに、転職後の仕事内容を証明する資料が必要です。以下のものが利用できます。
- 法人登記簿謄本
- 直近の決算書の写し
- 会社案内などのパンフレット
また、転職後の仕事内容を証明する資料として、雇用契約書のコピーも用意しましょう。
まとめ:外国人雇用で必要な書類の内容は、企業区分と在留資格で変わる
外国人雇用の際に必要となる書類は、企業区分によって大きく異なります。
まずは、自社がどのカテゴリーに属するかを確認し、その上で在留資格ごとに求められる提出書類をチェックしましょう。必要書類の一覧は、法務省のサイトから確認できます。
ただし、サイトで説明されているのは基本の必要書類です。申請する外国人本人の経歴や企業の事業内容、規模、職種、およびスタッフの人数等、個別のケースにあわせて追加資料が必要となることも。
個別のサポートが必要な際は、行政書士等の専門家に相談してみましょう。