外国人雇用の問題点は?企業が抱える3つの課題と受け入れの対応策

2019年4月より、新しい在留資格「特定技能」が創設されました。政府は、5年間で最大34.5万人の外国人労働者の受け入れを想定しています。

人口減少と少子高齢化で人手不足に悩む中小企業にとって、外国人労働者との共生はなくてはならない選択です。

「外国人を雇用しているけど、うまくいっていない」「雇用を考えているが、不安」

そんな企業のために、外国人受け入れをサポートする専門家の視点から、外国人雇用における問題点を解説します。

そして、外国人と共に暮らすにはなにが必要か、対応策をご案内します。

外国人を雇用したいけれど不安を抱えている経営者の方は、ぜひ参考にしてください。

 

外国人労働者の受け入れの現状|在留外国人数は30年前と比較して2.75倍

外国人雇用の受け入れ

1989年の平成元年では、日本で生活する在留外国人の数は98.4万人でした。それが2018年末には270万人を超えて、この30年間で日本に滞在する外国人の数は約2.75倍にも増えたことになります。

これからの5年間で想定される34.5万人の外国人労働者数の伸びは、いままでの比ではありません。

 

外国人在留数のトップは中国、労働者の増加が予想されるのはアジア諸国

在留外国人の総数でみると、トップは中国、それから韓国、ベトナム、フィリピンと続きます。

5位のブラジル(約19万6000人)と、8位のアメリカ(約5万6000人)を除いて、上位10か国を占めるのはアジア諸国が大半です。

 

【外国人在留数の国別総数】

1位 中国:741,656

2位 韓国: 452,701

3位 ベトナム: 291,494

4位 フィリピン: 266,803

5位 ブラジル:196,781

6位 ネパール: 85,321

7位 台湾: 58,456

8位 米国: 56,834

9位 インドネシア:51,881

10位 タイ:51,003

 

さらに、多くの外国人労働者を受け入れている「技能実習」の在留資格でみると、上位10か国は下記のようになります。

 

【「技能実習」の在留資格での滞在人数】

1位 ベトナム:134,139

2位 中国:74,909

3位 フィリピン :28,821

4位 インドネシア:23,245

5位 タイ:8,644

6位 ミャンマー :6,814

7位 カンボジア :6,499

8位 メキシコ:178

9位 マレーシア :83

10位 インド: 43

 

外国人労働者の新しい在留資格”特定技能”を徹底解説!』でご紹介しているように、技能実習2号の修了生は、日本語試験および技能試験免除で「特定技能1号」の在留資格を申請することが可能です。

そのため、これらの国からの外国人の方々が、より長く日本に滞在し働くと予想されます。

また、「特定技能」で想定されるのは技能実習を修了した外国人の方だけと限りません。

現在、「留学」で日本に滞在する人々も、「特定技能」の在留資格を利用することで日本で職を得やすくなります。

 

【「留学」の在留資格で滞在する外国人数】

留学生が勉強している様子

1位 中国:122,776

2位 ベトナム:80,683

3位 ネパール:28,001

4位 台湾:10,127

5位 韓国:17,097

6位 タイ:4,375

 

外国人を採用する企業と外国人労働者が抱く課題&不満の上位3つは?

外国人が不満を抱く理由

2018年末に東京商工リサーチが実施したアンケートでは、すでに3割を超える企業が外国人を雇用しています。

業種別で最多なのは「製造業」で、実に4割を超える企業が外国人を雇用していると答えています。

この中で、企業が感じる課題と働く外国人が抱く不満の上位3つの回答は次の通りです。

 

【企業側が感じる課題】

  • 1位:日本語能力(9%)
  • 2位:受け入れ体制が整っていない(7%)
  • 3位:手続き(在留資格・社会保障など)の煩雑さ(4%)

【外国人側が感じる不満】

  • 1位:(日本人労働者と比べ)賃金の低さ(5%)
  • 2位:日本文化の強要、自国文化への無理解(9%)
  • 3位:(日本人労働者と比べ) 年金や健康保険など社会保障の差(3%)

 

それぞれ、どのような課題なのか詳しくみてみましょう。

 

企業が感じる外国人雇用の問題点は、「言語」「受け入れ体制」「手続き」

企業側が抱く問題点をみると、

  • 外国人労働者とのコミュニケーション問題
  • 企業のサポート体制
  • 外国人の方を採用したり雇用し続けるための手続きの煩雑さ

という3つの問題が浮かび上がってきます。

企業が抱える課題の背景と、その改善策をご案内します。

 

外国人と働く上で、意識したい「言葉の壁」の乗り越え方

外国人を雇用している企業が感じている問題点の第1位は、「日本語能力」です。

実に半数以上の企業が、労働者のコミュニケーション能力に課題を感じています。

円滑な業務の遂行に、言語能力は不可欠です。すでに日本で学んでいるから、日本語能力検定をパスしたからと、書類上のレベルだけで判断するのは不十分です。

一概に「日本の学校を卒業した」といっても、日本語能力は様々です。

なかには留学し専門学校で学んでいても、学費を稼ぐために勉学よりもアルバイトを優先せざるを得ない留学生がいます。

 

採用予定の外国人や、雇用している外国人社員の日本語能力を、企業が正しく把握することが必要です。

そしてなにより、その仕事にどれくらいの言語能力が求められるのか、企業内で明確にし、ぜひ共有してください。

たとえば、日本企業を中心に取引する営業職は、日本語ネイティブと同等の言語力が必要です。

たいして、厨房で働くコックはある程度の意思疎通ができればよく、それ以上に料理の腕が重視されます。

このように、職種によって必要となる言葉の力は異なります。

企業側が正しくそれを把握し、働いている外国人の方が「日本語能力が足りない」と感じるようであれば、サポートする体制が必要です。

 

企業が外国人労働者の受け入れに必要なのは「連携」や「共有」

外国人を雇用するにあたり、大半の企業が不安を感じています。

受け入れ体制が整っていない状態で、外国人雇用者を拡大するのは双方に混乱をきたす原因に。

体制を整える際は、外部との連携と社内の共有を心がけてください。

外部との連携とはなにか。それは、外国人労働者のサポートを自社のみで行おうとしないことです。

先に述べた言語のサポートにはじまり、外国人支援を行う自治体サービスやNPOに目を向けてみます。

とりわけ、特定技能1号では外国人の受け入れにあたり支援計画を作成・実施しなければなりません。

大手人材紹介会社が、すでにこうした受け入れのサポートサービスを発表しています。

 

また、社内で価値観や労働条件を共有することが大切です。会社の価値観を外国人と共有し、外国人の方々の考えを知ることで、お互いの理解を深めます。

単純労働として雇い入れるだけではなく、専門技術の習得のキャリアパスや、賃金アップの条件を伝えることで、外国人労働者のモチベーションを向上させることができます。

 

不法滞在や不法就労はダメ!企業が在留資格を理解しよう

企業が在留資格に無理解なままだと、様々な問題を引き起こします。

考えられるのは、不法滞在に気づかなかったり、不法就労に従事させてしまうことです。

在留資格を得て日本に滞在する外国人は、永住者や定住者といった滞在期限の定めがない人々を除き、在留資格の期限が切れる前に更新しなければなりません。

また、「技能実習」や「特定技能」、働けるビザで申請者数が一番多い「技術・人文知識・国際業務」の在留資格などは、外国人が従事できる仕事の種類や範囲が決まっています。

経理で雇用したはずの外国人の方を、ホールスタッフとして働かせるのは違法な行為です。

外国人を雇用するにあたり、企業が知っておくべき法律の知識を必ず身につけておきましょう。

 

外国人労働者が抱く不満のトップは、「賃金」「文化の無理解」「社会保障」

 

企業が抱えている問題だけではなく、働く外国人自身が感じている不満にも目を向けてみてください。

不満を解決することが、外国人と共生できる職場環境を作っていきます。

 

人件費を抑えたいために、外国人を雇用する企業もあります。

しかしながら、不当に外国人の賃金を安く抑えることは、労働基準法や出入国管理及び難民認定法において禁止されています。

たとえば、労働基準法第3条では、国籍による賃金差別を禁止しています。

同じ階級で同様の職務についているのに、理由もなく「外国人だから」と低い賃金を設定するのは許されません。

在留資格での制限も無視できません。就労が認められる在留資格の一部には、「日本人と同等かそれ以上の給与を得ていること」を取得の条件にしているものがあります。

 

そして、働いている外国人社員の文化的な価値観や習慣を理解し尊重することが大切です。

たとえば、ムスリムの人々はハラルといって、宗教上食べられないものがあります。社食があるなら、こうしたハラル食への対応が望まれます。

 

雇用保険等の社会保障は、原則日本人と同じように適用されます。

日本の制度を伝え、働き生活する上での不安を取り除くことが、外国人受け入れで抱える問題の解決につながります。

 

まとめ:外国人雇用は悪いことではなく企業が積極的に課題解決に取り組む

積極的に課題に取り組むことが大事

外国人を雇用するから、問題が発生するわけではありません。問題が起きる背景には、言語能力の差や文化の違いがあります。

外国人と日本人で異なる労働条件を示すのが、差別につながることも。

拡大する外国人労働者の受け入れは、ただ単純に労働力が海外からやってくるわけではありません。

外国人という1人の数字の裏には、技術を得て一人前になりたい、稼いで家族を養いたいという人間の生活があります。

「働けているから大丈夫」と安易に考えず、社内の外国人の状況を把握し、職場と地域で不自由なく生活できるサポートを行うことが、受け入れ時に望ましい対応です。

企業が問題解決に積極的に取り組むことで、外国人と共生する社会がつくられます。